いたがき通信 Web版 Vol.34(2019年夏号)

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いたがきの開発課では、豊富な経験をもつベテラン職人が課を牽引し、同時に後続の育成にも力を入れています。自ら売場に立ち、お客様と直に接することで「使うプロ」の意見を開発に活かすという姿勢も、創業以来受け継がれている伝統の一つです。

使って納得してもらえるものづくりを目指して

販売現場からの声を直接製造に活かすことができる製造直販の業態は、いたがきの強みの一つでもありますが、今年はベテランの堀内健一と、入社8年目の倉谷健生の2名が中心となり開発担当者として各地の売場に赴いています。

「お客様には必ずご使用品の使い心地を聞いていますが、色々な意見を頂きます。マチが広いトートは沢山入って便利だけど、仕分けし辛いのでバッグインバッグが欲しいとか、手帳のポケットは字を書くときに段差が出るので自分は必要ない…とか。実際にお使いの方からの意見はとても参考になります。」と倉谷。ご使用品のお手入れを受けたり、預かった修理品を見たりして、くたびれやすい部分なども確認しています。

お客様の使い方を見て型崩れしやすいと分かった部分は芯材を入れて補強するなど、改良に役立てています。「しかし売場では、

使って納得してもらえるものづくりを目指して

そもそもハード革に比べソフト革は型崩れしやすい等、デメリットも伝えるようにしています。売って終わり、ではなく、10年後、20年後のことを考えてお客様と接したり、商品開発に臨んでいます。」堀内は職人としての経験から、永く革製品とお付き合いいただくための適切なアドバイスを心がけているといいます。「お客様に安心して使っていただきたいので、気をつけて欲しいこともきちんと伝えます。」

豊富な経験と知識をもとに

今年の夏新登場した製品にも、お客様の声が活かされています。亜麻とのコンビネーションで、使い勝手の良いサイズになってリニューアルした「鞍 セカンドショルダー」。「以前のモデルは根革(ショルダーの取付け部分)が細く金具が小さかったため、金具の摩耗による修理が多かったんです。」担当の堀内は、修理事例を受けて金具を大きく、丈夫なものに変更しました。「お客様にどのような物を入れるのかリサーチして、鞄が綺麗に見えるバランスを考えて一回り小さくリサイズしています。」

リニューアルした「鞍 セカンドショルダー」(手前)

リニューアルした「鞍 セカンドショルダー」(手前)

リサイズと一口に言っても単純に縮小するだけでなく、強度や造りの都合も考えながら、パーツ同士のバランスを全て見直す必要のある、とても気を遣う作業で、豊富な経験と知識が必要です。「革の厚さ1つから、全部考えないとならない。先輩から以前の修理事例などを元にアドバイスをもらって、学んでいます。」と、倉谷。彼が手がけた「鞍 ウエストポーチ」も亜麻仕様にするため本体の構造も変更しています。「造りを変えたことによって、パーツの寸法も変わり、型紙も裁ち直しました。仕上がりのバランス感覚はやはり経験なので、仕上がってから『何か違う…』ということも。」 すべての製品において以前は会長(創業者 板垣英三)が行っていた最終確認を今は江美現社長が引継ぎ、細かい微調整の指示や適切なアドバイスをもらい、それを形にしてようやく商品化のGOサインが出ます。「社長のバランス感覚は、やはり参考になります。」

世代を越えて受け継がれる姿勢

開発を手がける職人たちは、日々色々な刺激を受け、新製品づくりに活かしています。倉谷は今年、ミラノの素材展・機械展にも出向き、自らの目で新しい素材を探すという経験もしました。「今は、作り手として、お客様に満足してもらえる物を作ることが一番の目標です。お客様と接したときに頂く『良かったよ』の声が自分のモチベーションになっていて、もっとその声を増やしていけるように、これからも頑張ります。」

一方、堀内は「鞄作りの道に入って20年が過ぎましたが、自分も職人としてまだまだだと思っています。若い人に伝えているのは『頭を使え』ということ。これは、私が会長に口酸っぱく言われ続けたことです。周りの意見を聞かず、自分に満足してしまっている人ほど、考える力が足りず成長もしない。私が会長から学んだように、今の若い人たちにも、使い手の話、

経験者のアドバイスを参考に、最後には自分の頭で必死に考え抜いて、お客様に自信を持って薦められる製品を作って欲しいですし、そのようにものづくりに反映させることが開発者の責任です。」英三会長から直接指導を受けた世代が次第に少なくなっても、先輩や製品から学び、いたがきには創業者のものづくりの姿勢がこれからも脈々と受け継がれていきます。

世代を越えて受け継がれる姿勢

つくるプロから使うプロの方へ 番外編「一問一答コーナー」

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前回に引き続き、鞄の使い方・修理などについて今までお客様よりお寄せいただいたお問い合わせの中からピックアップし、作るプロがお答えいたします。ぜひ、今後のお手入れや鞄との付き合いの参考にしていただければと思います。

:財布や鞄のファスナーの調子が悪い。どうしたら良いでしょうか?

:ファスナーの使い始めは固いのですが、時間が経つごとに動きがスムースになります。しかし、中に物を入れすぎたり、無理して引っ張るとファスナーに負担がかかるので、適当な容量を収納し、開閉するときには押し付けず、できるだけ外側に少し引っ張るようにお使いいただくのがコツです。また、お財布など開閉する頻度が多いアイテムは5〜10年程でファスナーの金属部分が摩耗して閉じ方が緩くなったり、負担のかかる布テープの部分が擦り切れてくるのでファスナーの交換をお勧めします。

ファスナーの金属部分や布が摩耗した時は、ファスナー部分だけの交換ができます。

:使っているうちに、鞄の内装がボロボロになってしまった。

:いたがきの鞄の内装は耐久性や重さを考慮し、大きさやアイテムにより内装地を使い分けています。現在使用している再生革WINTANに切り替える以前に合成皮革を使用していたため、長年使用して劣化した内装は、内装を交換する修理をお勧めしています。内装地を張り替えることで型崩れも改善され、革のオーバーホールも行うため見違えるほど蘇ります。また、長い期間使わないで保管している鞄は、年に一度か二度は空気に触れさせることで劣化を防ぎ、必ずお手入れすることをお勧めします。

合成皮革の内装地は、長年使用していると劣化してきます。

内装地を張り替えることで、見違えるほど鞄は蘇ります。

いたがきでは、こうしたお客様の声を受け、鞄の内装生地を丈夫なものに変えるなど、修理を通して製品の品質向上に繋げています。製品・修理に関するお問い合わせは随時お電話・ホームページお問い合わせフォームにて受け付けておりますので、お気軽にお問い合わせください。

直営店情報 〜ようこそいらっしゃいませ!〜

京王プラザホテル札幌店

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札幌市屈指のロケーションを誇る京王プラザホテル札幌。札幌駅から徒歩5分ほどの所在地ながら、傍には北大植物園や旧道庁、北海道大学などの観光スポットもたくさんあります。「広場(プラザ)」のように集い、行き交う人と人との出会いを大切にするという京王プラザホテルのコンセプトのもと、この度いたがきでは、6月1日にアーケード一角に「いたがきギャラリー」を期間限定でオープンしました。シックで落ち着いた店内は、どこか男性的な雰囲気で、これまでとは一味違ったいたがきの世界観をご堪能いただけたと思います。

これからも多くの方が行き交うこの場を借りて、もっと北海道のものづくりを発信していけるよう色々なチャレンジをしていきたいと考えています。

この夏、京王プラザホテル札幌店では、北海道限定商品として、人気のソフトレザーシリーズから小ぶりのトートバッグをご用意しました。ちょっとしたお出かけ用として、カジュアルにも和装にもピッタリのアイテムです。どうぞご来店になり、ご覧ください。北国も外を歩くのが楽しい季節です。お近くにお出かけの節は、ぜひお立ち寄りください。

京王プラザホテル札幌店

京王プラザホテル札幌店
〒060-0005
札幌市中央区北5条西7丁目
TEL・FAX: 011-280-5555
営業時間: 10:00~19:00(第3日曜定休)

京王プラザホテル新宿店

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新宿ビルから眺める新緑の緑もいっそう青々と眩しく輝き、夏も間近となってまいりました。京王プラザホテル新宿店は、おかげさまで7周年を迎え、6月5日にはリニューアルオープンいたしました。床はホテルの廊下から繋がる大理石となり、照明はLEDに変わり、開放感のある明るい店内になりました。いたがき製品の特徴を最大限に引き出すタンニンなめしの肌触りや色合いも今まで以上鮮やかにご覧いただけることと思います。

またこの夏の北海道外限定商品として、亜麻とのコラボレーションでいたがき伝統の

鞍モチーフのデザインを施した2wayのウエストポーチをご用意しました。暑い夏のお出かけアイテムとして、涼しげな一品で、ショルダーバッグにもなり、男性にも女性にもお使いいただけます。また、店舗のオリジナル版、幸せを呼ぶ「馬蹄版」も密かな人気ものとなっています。ご希望の方はお気軽にスタッフまでお声掛けください。

東京オリンピックもいよいよ来年夏に迫り、街並みも目まぐるしく変わりつつあります。この機会に一人でも多くの方にいたがき製品やタンニンなめし革の魅力をお伝えしたいと思います。

京王プラザホテル新宿店

京王プラザホテル新宿店
〒160-8330
東京都新宿区西新宿2丁目2番1号
京王プラザホテル新宿 南館ロビー階
TEL・FAX: 03-5325-2663
営業時間: 10:00~19:00(年中無休)

編集後記

梅雨の無い北海道も近年はこの季節に雨が増え、「蝦夷梅雨」と呼ばれています。今号のあかびらだよりでご紹介したように、道内では短い夏を謳歌するように毎週各地でイベントが開催されますが、お天気の機嫌が崩れないようにお祈りするばかりです。次回は「いたがきのものづくり」最終回、修理事例から生まれた商品についてご紹介します。お楽しみに。