いたがき通信 Web版 Vol.14(2012年秋号)

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いたがき30年を振り返って
〜現在から未来へ〜

素材を大事に、高い技術を駆使してニーズにあったものを形にしてお届けする

創業から直営店構想まで

1982 年10月2日に北海道 赤平で創業したいたがきは、仕事の無い苦節の時代を経て、カタログハウス「通販生活」で紹介いただいたり、JR北海道「北斗星」のノベルティに採用されたことを機に、少しずつ全国のお客様にタンニンなめし革の良さ知っていただけるようになりました。
作り手自身が自らの言葉で、素材や商品について説明することでお客様に納得してご購入いただいて、お手入れや修理など商品のアフターフォローをして長く大事にお使いいただくために、全国各地の百貨店催事を回り、お客様とじかに触れ合うことを大事に考えてきました。

そして1995年にオープンした麻布十番店を皮切りに、お客様とのコミュニケーションスペースとしていつでもお越しいただける直営店を持つことができるようになり、今ではお陰様で西は京都まで6店舗の直営店があります。直営店ではご来店下さるお客様の声をお聞きして作り手に伝えて、ものづくりにも積極的に参加する気持ちで、ニーズに合わせた新しい商品の開発に繋げていくための発信を日々赤平本社に向けて行っています。

ヨーロッパでの素材調達と商品開発

ボローニャ見本市にて

ファスナーで側面がフルに開き、中身の取出しや整理が容易なML507 ボストンバッグ

植樹祭
10月6日赤平本店にて、創業30周年を記念して植樹際を開催しました。当日はあいにくの空模様でしたが、幸いにも植樹の間は雨も上がり、お客様に見守られながら和やかに執り行われました。

今年4月に就任した社長 板垣江美はドイツ在住で、いたがきの生命線である素材の開拓を行ってきました。イタリア ボローニャで毎年春と秋に開催される皮革見本市「Lineapelle(リニアペレ)」などヨーロッパ各地で開催される展示会や老舗なめし工場などに直接足を運び、いたがきの製品づくりの源になる質の高い革を安定的に調達しています。Rugato(ルガトー)革、ベルギー革、内装材のスイスメイドの再生革Wintan(ウインタン)など最近新たに取り上げている素材も、板垣江美がヨーロッパで出会ったものです。時代に左右されず、より良い製品を作り続けるために上質の素材を手に入れること、より良い素材を求めて各地を駆け巡っています。若いころからヨーロッパに出向き、今では頻繁に日本とドイツを往復する移動の最中にすれ違う人々の手元を観察したり、自ら旅の中で経験したことをヒントにして多くの製品開発も行ってきました。例えば、大容量のボストンバッグは、下に入れたものが埋まってしまいホテルのベッドの上にでも中身を広げないと取り出せないことに不便を感じ、取り出し口を上ではなく横に付け、まるで移動式の小さなクローゼットのような形を考案しました。便利な外ポケットや切符差しポケットが付いている製品が多いのも、いたがき製品の特長で女性ならではの繊細な発想と自身の経験が元になっています。

いつまでもご愛用いただくために

いたがきでは、ご愛用いただき育て上げた思い出の詰まった製品を少しでも長く使い続けていただくために、早くから修理を承ってきました。
革自体が風化してさえいなければ修理が可能ですが、革製品は使う過程で伸びや縮みがあり一点一点状態が異なるため、新品を作るよりも数倍の手間と高い技術を要します。しかしながら馴染んだ革製品は新品とは比べられない程の風格を持ち、受け取ったお客様には大変喜んでいただける、とてもやりがいのある仕事です。
先日もあるお客様から、修理部門スタッフの心に残るご依頼がありました。ご主人が亡くなり、その後震災に遭い家も全部無くなってしまいましたが、ご主人の形見であった鞄だけは残ったということで、修理に送られてきました。鞄が入っていた箱にはマジックで「パパの出張バッグ」と書かれていて、ご主人がご健在の頃、この鞄がいかにご家族にご愛用いただいていたのかを偲ぶことができました。嬉しいことに、きれいに修理させていただいた鞄は、お孫さんが使いたいと言ってくださったそうです。
これからも皆様の想いの詰まった鞄が後世に受け継いでいかれるように、少しでもお手伝いができればと思います。

いたがきの基本姿勢は、「素材を大事に、高い技術を駆使して、ニーズに合ったものを形にしてお届けする」こと。それは30年経った今でも変わらず、これからも守り続けてまいります。
30周年の記念に植えた3本の木が大きくなる頃には、今現場で地道に苦労を重ねている若いスタッフ達が経験を積み自信を深め、いたがきの人間としてお客様の信頼を得られるようになることが私たちの心からの願いです。

いたがきの人ー座談会ー 革の個性を見つめるパーツ作り

今回は、裁断課の現場で革と向き合う4名が、いたがきの源流である革について語らいました。

製造部 伊藤博之 平成16年8月入社
製造部 田村裕之 平成19年2月入社
製造部 奥原潤 平成17年4月入社
製造部 中村和雅 平成20年11月入社

奥原: 裁断課では鞄を作る最初の行程として、革を始め芯材や金具などパーツを全て準備しています。

中村: 私は裁断した革の厚みを調整する仕事をしています。製品はパーツごとにそれぞれ厚みが決まっていて、特に小物類は厚みが違うと作りにくくなってしまうため気を遣っています。革は天然素材のため一枚一枚コンディションが異なり、部位によっても特性があります。効率化のためやむを得ず裁断機などの機械は使っていますが、革の状態を把握しながら臨機応変に対応しないといけません。

田村: タンニンなめしの革はとても手間暇をかけて作られている職人泣かせの革です。大事な素材を無駄なく使い切ることが、お客様のためにも会社のためにもなり裁断課として大事なことなので日々課題にしています。

奥原: 革は1枚1枚違うので、いつも挑戦する気持ちで取り組んでいてもこれでよいという満足感が得られにくい仕事ですが、キズが多い革など特に隅から隅まで使い切ることができると気持ちも良く達成感を感じます。

伊藤: 扱う革の種類は色々と増えていますが、どれが一番という訳でなくそれぞれに良さがあります。いいものづくりを追い求めて様々な素材に触れることで、革についての見聞も深まり、自分たちの肥やしになっています。

田村: 革は天然素材ですので傷があって当たり前ですし、むしろ生傷があるところは、修復能力の高い良い革の証拠です。革が好きな人ほどその革だけにしかない個性を楽しむのではないでしょうか。

伊藤: 革は古くから人と付き合っている素材です。いたがきの革製品もお手入れさえすればずっと付き合っていけるので、ぜひ末永く使って頂きたいと思います。

4名はいたがきのものづくりにおいて、革の個性を理解することの大切さを話してくれました。
本当の革の良さをより多くの方に知ってもらうため、これからも私たち作り手からの情報発信を続けていきたいと思います。

※グレーの文字は主な世の中の出来事です。

1982昭和57年 株式会社いたがき設立

鞍ショルダー
CDが誕生、500円硬貨登場
1983昭和58年 キーホルダー類
東京ディズニーランド開園
1984昭和59年 赤平市30周年記念コースター受注
江崎グリコ事件
1986昭和61年 カタログハウスに掲載される
プレイング束入れ
男女雇用機会均等法施行
1988昭和63年 本社工場増築
サイドハンドルポーチ
青函トンネル開通
北斗星開通
1989平成元年 北斗星ノベルティ受注
昭和天皇崩御、消費税導入
1990平成2年 本社工場増築
タウンボストン
1991平成3年 札幌平岸店オープン
ボストンバッグ
ソ連消滅
1992平成4年 ズームイン朝にて紹介される
北海道物産展が盛んになる
マルチトートシリーズ
パンプキンシリーズ
トートバッグシリーズ
貝がらシリーズ
日本人初スペースシャトル乗組員毛利衛さん宇宙へ
千歳空港ターミナルビルオープン
1994平成6年 ウェーブショルダー
ドル入付札入れ
村山連立内閣発足
1995平成7年 札幌平岸店閉店
東京麻布店オープン
スクエアシリーズ
阪神大震災
地下鉄サリン事件
1996平成8年 ハンドバッグ
1997平成9年 同社専務(現社長)ドイツにて
《Emi Itagaki Design》設立
京都議定書発足
消費税5%に改定
1998平成10年 長野冬季オリンピック
2000平成12年 鞍ベルトポーチ
雪印乳業食中毒事件
2001平成13年 アメリカ同時多発テロ事件(9.11 テロ事件)
2002平成14年 日本韓国共同開催サッカーワールドカップ
2004平成16年 マルチトートA4
アテネ五輪開催
2005平成17年 愛・地球博覧会開催
2006平成18年 リュックサックA4 3way
2007平成19年 麻布十番店リニューアルオープン
京王プラザホテル札幌店オープン
第二回ものづくり日本大賞 優秀賞受賞
2008平成20年 新社屋完成
ロゴ改定

明日を支える元気なモノ作り中小企業300社に選出
北海道・洞爺湖サミット開催
2010平成22年 京都三条店オープン
上海万博開幕
2011平成23年 東日本大震災
2012平成24年 京王プラザホテル新宿店オープン
内装ウィンタン仕様スタート
つくるプロから使うプロの方へ 革のお手入れ

革は天然の素材なので、牛が育つ環境や気候によって違いがあり、その皮をなめす会社によっても出来上がりの風合いが異なります。
革の特徴を見極め、製品に合う最高の素材を選ぶことは、ものづくりの源となりますので、素材の調達には大きなエネルギーを費やします。

いたがきでは創業当時から長い間、日本でなめしている北米産原皮の革を使ってきましたが、ここ10年来はベルギーでなめしているヨーロッパ原皮の革も使用しています。店頭では、スタッフがそれぞれの革の違いや良さを製品を通してご説明しております。ぜひ、お客様ご自身の手でお確かめください。

※革製品をお使い始め、こまめにお手入れすると擦れによる早い劣化を防ぎます。これは、お手入れすることで革に弾力が出て、傷がつきにくくなるからです。手を掛けることで、お気に入りの品を長くお使いいただけるのも革製品の魅力のひとつです。 (注)保護クリームの付け過ぎにはお気を付けください。

いたがき直営店 人気商品ランキング

直営店の中で一番の古株・麻布十番店と、オープン2周年を迎えたばかりの京都三条店
いたがきの東と西の拠点としてご愛顧いただいている2店の、それぞれの人気商品をご紹介いたします。

麻布十番店スタッフから

地下鉄大江戸線または南北線の麻布十番駅で下車し、地上へ上がってから徒歩3 分ほどに位置します。近くには老舗の豆屋さんや、たいやき屋さんなどが軒を連ねる商店街があります。また、人気のパン屋さんや、イタリアンレストランなどもあり、歴史と新しさとが融合する魅力的な街で散策にもおすすめです。麻布十番店にもよく散策中の方がふらりとお立ち寄りくださいます。店舗はL字型の店内と独立したショールームというユニークな造り。いたがきと縁のあるバイオリニストの演奏が流れる落ち着いた雰囲気の中ごゆっくりとお買い物をお楽しみいただけます。ぜひ一度足をお運びくださいませ。

麻布十番店

〒106-0045 東京都港区麻布十番2-21-14
TEL・FAX 03-5439-9895 火曜定休日

京都三条店スタッフから

店舗は東海道五十三次の終点で古くから京都の主要道路でもある三条通りに面しています。ちょうど繁華街の真ん中辺りにあり少し北へ行けば京都御苑、南へ行けば錦市場や四条通りへもすぐです。見どころや買い物どころも多く、休日になるとたくさんの人で賑わいます。そんな京都三条店には日本全国、海外からも様々なお客様が立ち寄られます。お客様同志でお話しに花が咲いたり、お勧め情報の交換をされたりと一期一会もあります。木のぬくもりを感じられる店内でゆったりと製品をご覧いただきながら、旅の楽しい思い出をお聞かせ下さい。

京都三条店

〒604-8111 京都市中京区三条通柳馬場西入桝屋町78番地
TEL・FAX:075-222-5656 火曜定休日

編集後記

3回に渡りお届けしてきました「いたがきのあゆみ」にお付き合いいただきありがとうございました。今回ご紹介した目指す姿に向かい、これからも邁進してまいりますので今後とも温かく見守ってくださいますようお願い申し上げます。来年のかわら版もどうぞお楽しみに!