いたがき通信 Web版 Vol.8(2010年秋号)

いたがきに関する話題をお届けしている
年3回発行の「いたがき通信」
今回の特集は

です。

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職業還暦60年を迎えて 丁稚奉公ものづくり人との出会い 「赤平に根をおろす・・・誘致企業の社員として北海道転勤、そして独立、いたがきの誕」板垣英三 談 その2

前回までのあらすじ
丁稚奉公から鞄づくりの技術を学び、家族で会社を設立したものの、小異を捨て大同につくの慣わしで大手鞄メーカーの運営を任され、小田原、そして最後には北海道赤平へ移住することになりました。17年間のサラリーマン生活を経て、1982年赤平でいたがきを設立しました。

その1 を見る その2 を見る


旧社屋

直営店構想の礎

お客様と直接触れ合う場所~直営店の開設

本社設立当時は、一棟2戸建の職員住宅を賃貸して工房としてスタートしました。しかしながら非常に狭い上に古く、外観からしてみても、とてもお客様に足を運んでもらえるような有様ではありませんでした。そこで、当時の知り合いから「お客様にとっては外観である器が大事」というアドバイスをもとに、昭和63年に職員住宅〈約70坪〉に工場を建設して、ショールームを設けました。私達は、“ものづくりのプロ=職人”ではありますが、そのモノを使うのは“使うプロ=お客様”です。私達が作ったものをきちんと説明をして、使うお客様の声をきちんと聞く場所の必要性は、この頃から肌で感じるようになりました。お客様と直に触れ合い“顔が見える”関係がこの赤平から始まり、今でもその関係を大事にして商品づくりに役立てています。

アンテナショップ〈直営店〉の立ち上げ


初めての直営店内

平成に入る頃から小さいながらに会社も安定してきましたが、片田舎の赤平はそれほど多くのお客様に足を運んでもらえる場所ではありませんでした。そこで北海道の中心である札幌に、初めての直営店を出しましたが、名が通っていない弊社の製品、店舗の場所は来ていただくには少し不便であったため収支のバランスは思うようにとれず、3年で苦渋の決断をして一旦、閉店しました。そのかわりに若いころに仕事をしていた、多くの知り合いのいる東京へ移ることにし、友人の力を借りて、麻布十番のお店が誕生しました。その頃から全国の百貨店での北海道展に出展、北海道の北の玄関である新千歳空港やオープン時には話題沸騰したサッポロファクトリーの《ななかまど》に商品を常設していただいたりと、より多くのお客様の目に触れる機会を頂戴することが出来ました。平成19年11月には、当時の支配人からお誘いを受け、札幌の直営店として京王プラザホテル札幌店が誕生しています。好評をいただいている名入れサービスは、より多く方々にタンニンなめしの革の良さを使って知ってほしいという願いから、なかなか売れない現場で考えて考えて試行錯誤を繰り返して考案したもので、タンニンなめしの革だからこそ焼ける《名入れ》はその場で入れてお渡ししてお客様に喜んでいただけることに私自身もたいへん満足しています

赤平本社新社屋の設立


写真は名入れの見本です。お名前やイニシャルを入れることでより革への愛着が深まり、大事にお使いいただいています

北海道の多くの方のご協力を頂いて、いたがきを知ってもらう機会も増え、年間を通じて、多くのお客様が赤平に足を運んでくれるようになりました。働く人の環境とお越しいただく全国からのお客様をお出迎えする場所として、いたがきを象徴する“エコファクトリー”が完成しましたのは平成20年6月、従兄弟で建築家の中津原氏の協力を得て、自然豊かな赤平にふさわしい屋上緑化や石油を一切利用しない太陽光エネルギーシステム、自家発電看板など斬新な技術を導入し、広々と店内を見渡せるショールームとくつろぎの喫茶スペースも設けた新社屋が誕生しました。お客様と作り手が触れ合う機会も増え、お客様の存在を実感しながら日々ものづくりに取り組むことが出来るようになりました。

これから進むべき道
~板垣英三からのメッセージ~


平成22年4月2日麻布十番店15周年記念写真

丁稚入りして鞄づくりを学び、いたがきを立ち上げ必死にやってきて、気付いてみると75歳になっていました。日本は世界に誇るべき技術を有し、アジアのなかでも模範になるべきものづくり大国です。職業還暦60年を迎えはしましたが、ものづくりを極めるには学ぶべきことはまだまだあり、そんな私と共に働く人たちの“人”づくりに力を注いでいかなければならないと感じています。日本が守るべき技術や伝統を、今の時代に埋もれてしまわないように残していくことが、国民としての責任と考え、私もその一人として微力ではありますが、身体が動く限りものづくりを通して、働く人の支えとなり、求める人の要望に応えていきたいと思います。

これからもどうぞよろしくお願い申し上げます。

京都三条店界隈のおすすめスポット

1イノダコーヒ

創業70周年を迎える老舗コーヒーショップ。京都を訪れたら先ずは“イノダ”へと言われる程の有名観光スポットでもあります。スマートなサービスと香り高いコーヒーが、日常的でいて少しだけ特別な気分にしてくれる。「アラビアの真珠」と名付けたブレンドのコーヒーが特に有名。店長の植坂さんは、札幌のイノダコーヒの立ち上げに関わった大の北海道ファン!

2ドゥーズグー

築120年の町家の扉を開けると鏡や鉄骨を使用したスタイリッシュな1Fと天井の梁を軸に温かみのある2Fフロアが現れる。野菜のおいしさを求め季節感を大切にするシェフの鮮やかな腕前を満喫したいなら、9皿から構成されるディナー8,500円がオススメです。

  • 住所:中京区柳馬場 三条下ル西側路地裏
  • TEL:075-221-2202
  • 営業時間:11:30~14:30 Dinner: 17:30~23:00(L/O 21:00)
  • 定休日:木曜日
  • オフィシャルサイトはこちら

3京都デザインハウス

2009年4月10 日に移転オープンした京都伝統の技法や素材にこだわったセレクトショップ。「京もの」を中心に、文具・食器・インテリア・ファッションアイテムなど、デザイナーズ家具からコレクターズアイテムまで常時1,500点以上の商品を揃え。安藤忠雄建築研究所が設計を手掛けた店舗ビルがより一層の存在感を醸し出します。

4一澤信三郎帆布

京都・東山にだけ店舗を構え、客足が途絶えることのない京都を代表する老舗。天然素材である帆布でできたバックは、使い込むほどに味がでる、愛着が持てる、さり気ない普段着感覚のかばんとして人気が高く、修理の対応もOK。「布」と「包」をあわせて作った漢字で「かばん」と読ませるロゴにも、京都に長く息づく老舗ならではの粋な遊び心が感じられる。

  • 住所:東山区東大路通古門前北 知恩院前交差点東大路通西側
  • TEL:075-541-0436
  • 営業時間:9:00 ~ 18:00
  • 定休日:火曜日
  • オフィシャルサイトはこちら

5京都府京都文化博物館

京都の歴史と文化を紹介する総合的な文化施設。歴史展示室・美術工芸展示室・映像ホール・映像ギャラリーなどの常設展、さまざまな特別展も年間を通じて開催しています。2010年12月6日から2011年7月頃まで常設展示を中心としたリニューアル工事のため休館。

Topics

前号のトピックスでご紹介した、国際的彫刻家 流政之氏の作品は、いたがき本社のある赤平にも寄贈されましたが、京都三条店周辺でも多く見かけます。大丸京都の敷地内にある「はんなり地蔵」、阪急烏丸駅近くの「OKIBARIYASU」、地下鉄京都市役所前駅改札口の「こんちき」。力強い作風からは想像もつかないユニークでユーモラスなキャラクター達。どこか親しみのある懐かしい気持ちになります。
右の写真:はんなり地蔵

http://www.kokorowake.net/nagare.html

京都三条店より
~おすすめの逸品《受注制作品》~

昔懐かしレトロなハンドバッグ。長財布が入る大きさで、携帯電話ポケットも付いて実用面も充実。


B713 RUGATO ハンドバッグ

受注制作品63,000円(税込)

  • ハンドル長さ36cm
  • 後ポケット×1、
    後ポケット( 切符差し付き)×1、
    内ポケット×1、
    携帯電話ポケット×1、
    ファスナーポケット×1、
    カードポケット×1 手鏡付き
  • H145 × W270 × D90 ㎜・530g
つくるプロから使うプロの方へ 革のお手入れ

ルガトーは、創業1873年というベルギーの老舗、タンナリー・マズアー社がなめした革の名。表面に筋が入った「トラ」と呼ばれる革の模様を美しく活かし、「革の宝石」のようにつややかに仕上げられています。 このルガトーの革、牛の頭から胸にかけての「ショルダー」と言われる部分を使用しています。首はタテヨコ、上下に動かすところなので、丈夫で柔軟性があり、耐久性が求められるハンドルにに適した部分で、深いしわがあり普通、見栄えは良くありません。 ベルギー・マズアー社では見た目に汚点とも言えるしわを、1本1本異なる表情ごとに屈指の技術で個性的に美しく仕上げています。堅牢なタンニンなめしの革のイメージを一新してしまう程の、エレガントで上質な仕上がりに、男女問わず多くの人たちが虜になります。 使えば使う程に愛着が増すタンニンなめしの革、その性格を持ち合わせながらも、何年経ってもその輝きを失わないルガトーの革。10年前に出会ったルガトーの革、新しい素材との出会いは私たち作り手の創作力をかきたてる原動力となっています。
この素材の魅力を精一杯引き出して、一味違う、一クラス上の鞄づくりに邁進していきます。