いたがき通信 Web版 Vol.35(2019年冬号)

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「いたがきのものづくり」最終回は、いたがきの修理現場から。実際にお客様が使用した愛用品からは、次の製品づくりにつながる多くの学びや発見があります。

修理現場からの製品改良

お客様からの大切な愛用品を預かる修理部門では、新品を作るよりも高度な技術が求められ、経験豊富なスタッフが作業にあたっています。現在修理部門の責任者を務める橋本実は職人歴20年のベテラン。修理業務の一方で、新商品の開発にも関わっています。作り手の視点から手元に届いた修理品を見て、どのような不具合が起きたのかを一つひとつ確認していきます。「戻ってきた修理品から、強度が足りない部分や型くずれしやすい部分などが分かれば、現行商品の仕様を改善するという動きを常に行っています。」と、橋本。細かな仕様変更はもちろん、M507Mボストンバッグのようにハンドルの作りを丸ごと見直すようなこともあります。「以前のハンドルは平たいシンプルな作りで、鞄の大きさに対して華奢だったため革が伸びてしまうケースが多かった。そこで、中に革芯を入れて強度を増し、丸くすることで握りやすさも改善しました。」このようにいたがきでは、修理依頼や販売現場から得られるお客様の声を次のものづくりに活かしています。

ハンドルを改良したボストンバッグ(手前:新仕様、奥:旧仕様)

ハンドルを改良したボストンバッグ(手前:新仕様、奥:旧仕様)

タンニンなめし革だからこその修理

いたがきでは創業当時から、自社製品の修理を承っています。使うほどに風合いが増して価値の高まるタンニンなめし革だからこそ、より永く使ってもらえるようにとの考えから、修理を請け負うようになりました。今では、年間で1,200件以上の修理依頼を受けています。修理は有償ですが、製造部責任者の丸山実樹代は「正直なところ、修理代金では採算は取れていません。」と打ち明けます。修理作業は、通常の生産よりも格段に時間がかかるためです。「一度解体した部分に新しい針穴を空けることはできないため、慎重に穴を合わせて、一針ひと針元通りに縫い合わせて行きます。今ではもう作っていない製品も多いので、自分が手掛けたことが無いものでも、おおよその組み立て方が理解できていないといけません。経験が必要な作業です。」丸山自身も長年修理に携わり、その難しさと同時にやりがいも感じてきました。修理後、愛用品の見違えた姿に驚く方は多く、その感動をしたためた手紙が届くこともあります。毎日コツコツと作業をしている修理スタッフにとっては、お客様からの温かな言葉が何よりの励みとなっています。

一生使える鞄づくりを目指して

手間も時間もかかる修理をいたがきが続けている背景には、創業者である板垣英三の信条であった「一生使える鞄づくりを」という考えがあります。

修理部門のスタッフも毎日修理品と向き合い、お客様の愛着の強さやタンニンなめし革の丈夫さを日々実感しており、愛用品を大事に永く使って欲しいという想いは人一倍です。皆様の愛用品に再び命を吹き込む作業に誇りを持ち、日々精進を続けています。

修理は、「使うプロ」であるお客様の使用品を直接見て学ぶことができる、またとない機会。愛用者といたがきのコミュニケーションツールであり、いたがきにとって欠かすことのできない取り組みの一つです。これからもいたがきでは皆様からの声を元に、より良いものづくりを目指していきます。ぜひご意見やご要望をお寄せください。

リペア

つくるプロから使うプロの方へ 番外編「一問一答コーナー」

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鞄の使い方・修理などについて今までお客様よりお寄せいただいたお問い合わせの中からピックアップし、作るプロがお答えいたします。ぜひ、今後のお手入れや鞄との付き合いの参考にしていただければと思います。

:直営店でも販売員の方に軽修理をしてもらえるとのことですが、軽修理と本社で行われる修理の違いは何でしょうか?また、どの程度から修理に預けることになりますか?

:直営店で受けられる軽修理はコバ塗り、ホック交換、かしめ金具交換、鞄のハンドルにある指輪(留め輪)の取り付けなど小さなパーツの修理が中心です。本社の修理班ではハンドルの交換や劣化した内装革の交換など、鞄そのものや大きなパーツの修理を中心に行っております。いずれも実際に製品の様子を確認しての判断になりますので、何か不具合がありましたらいたがき各直営店や開催中のイベント会場にご持参いただくか、または直接赤平本社 修理部宛てにお送りください。

直営修理

いたがき直営店では、ホック交換など小さなパーツの軽修理が可能です。

本社修理

本社での修理の様子。鞄全体を解体して底革を張り替えます。本社ではこのような大規模な修理が中心になります。

:お手入れの時に、乾燥や傷つくのが怖くてついつい保護クリームをたっぷり使ってしまいます。使いすぎてもよくないのでしょうか?

:お手入れは、革にとって非常に大切ですが保護クリームの塗りすぎは逆に革に悪影響をもたらしてしまいます。革の表面には肉眼では見えない凸凹があり、そこに保護クリームが入り込むと、革の表面が白っぽくなってしまうのです。財布よりも鞄、特にソフトタンニンの革で起こりやすく、暗い色の革ほど目立ちます。状態を見るために、爪の甲などで革に傷がつかない程度に軽くこすって、こすった跡が白くなるようでしたら塗りすぎているので、水拭きのみのお手入れにしてください。また、レンジで温めた蒸しタオルなどで革を温め、表面に浮き出てきた保護クリームを拭き取ることも効果的です。革の状態によって塗る保護クリームの適量は変わります。ご不明な点は、直営店販売スタッフやイベント会場のスタッフにご相談ください。

保護クリーム

保護クリームの塗りすぎは革にとって、悪影響なのでご注意を。

いかがでしたか。一問一答は今回で最終回です。いたがき製品の取り扱いについて少しでも参考になれば幸いです。 次号も引き続き、作るプロからお客様に向けて情報を発信していきます。ぜひ楽しみにお待ちください。

直営店情報 〜ようこそいらっしゃいませ!〜

赤平本店

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吐く息の白さが冬の訪れを感じさせる季節。赤平本店では、今年も木屑を燃料とするペレットストーブを設置いたしました。

春夏で育った木々の恵みが、秋冬には体をほぐすぬくもりになるように、革製品もお客様にとって心のぬくもりとなっていただけるよう、スタッフ一同おもてなしの準備を整えてお待ちしております。

ペレットストーブ

また今年は新たな取り組みとして、いたがき初の長期開催となる「冬のものづくり体験会」を11月から2月まで行います。メニューはシンプルな「オリジナルキーホルダー」。職人が革に関する豆知識も交えながら楽しくお教えいたします。

思い出づくりや贈り物に、世界に一つのキーホルダーを作れるこの機会をぜひご活用ください。実施は赤平本店のみ、1回1,100円(税込)で定員4名様、12/27〜1/6を除く月〜金曜日の10:00〜17:00、祝日も月〜金曜日は対応可能です。ご予約は前日までにお電話またはメールにてお願いいたします。(月曜日ご希望の場合は前週金曜日まで。)詳細はこちらに

冬ものづくり体験会 タグ製作

「冬のものづくり体験会」は、
11月〜2月までの長期開催

赤平本店

赤平本店
〒079-1102
北海道赤平市幌岡町113番地
TEL:0125-32-0525
FAX:0125-33-7737
営業時間: 10:00~17:00(年末年始休)

新千歳空港クラフトスタジオ店

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最大の観光シ-ズンである冬の北海道。大自然へつながる最初の一歩として皆様をお迎えするのが、北海道の空の玄関口「新千歳空港」です。

白銀の世界を求めておいでになる沢山の方々には、海外からのお客様も年々増加しており、北海道への期待の高さも感じます。

2019年秋には、そんな海外からのお客様を歓迎し、国際線ターミナルビルを今までの2倍の広さに拡張しリニューアルしました。それまでも天井が高く開放的で国内線とは違う雰囲気がありましたが、ツアーで来られる沢山のお客様がゆったりと過ごせる空間へと生まれ変わりました。

国際線ターミナル

リニューアルオープンした国際線ターミナル

また、2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催による、より多くのお客様のご来道に合わせて、来年春には空港直結のホテルも完成する予定です。

新千歳空港ご利用のお客様に、世界に誇れる洗練された「いたがきの鞄」を、ぜひ手にして頂きたいと出店して27年目となります。これからも空港をご利用の際は、クラフトスタジオ店へお立ち寄りください。皆様のお越しを心よりお待ちしております。

新千歳空港クラフトスタジオ店

新千歳空港クラフトスタジオ店
〒066-0012 北海道千歳市美々
新千歳空港ターミナルビル2F
TEL:0123-46-5732
FAX:0123-46-5733
営業時間: 8:00~20:00(年中無休)
(名入れ実施時間10:00~19:00)

訃 報

新聞記事や弊社のホームページですでにご存知の方も多いと思いますが、今年7月11日、いたがきの創業者である板垣英三が83年の生涯を全うし、永眠いたしました。10月11日(金)〜10月14日(月・祝)に各直営店で行われた創業祭では、英三の愛用品を再現した限定品を販売。赤平本社の工房では、実物の愛用品や仕事道具の展示と、スライドショーにて英三の人生を振り返る展示を行いました。多くのお客様にご来店いただき、お悔やみや励ましのお言葉をいただきましたこと、御礼申し上げます。私たちは、英三がタンニンなめしの革にこだわり、そして生涯をかけて築いた「いたがきのものづくり」の精神を受け継ぎ、今後も皆様にご満足いただける鞄づくりを目指してまいります。

愛用品の展示
編集後記

今年は全3回に渡って、「いたがきのものづくり」をテーマにお届けしました。今年7月、創業者・板垣英三が永眠し、我々従業員一同で英三が遺したものづくり精神を守っていかねばという想いを一層強くいたしました。よりよい製品を作り続けていくために、ぜひこれからも皆様のお声をいたがきにお寄せください。