いたがき通信 Vol.44 2022年冬号

めぐる、つなぐ。~歩み続けることで実現した、一枚革仕立て~

創業以来長きに渡り、質の良い素材を求めてきました。長い時間をかけて同じ素材を使い続けてきたからこそ、安定した品質の革が手に入るようになり、革の使い方においても色々な可能性が見えてきました。
この号では上質な素材について、その素材を駆使して、創業者の意を継いでものづくりに励む職人たちが開発した商品をご紹介します。

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めぐる、つなぐ

歩み続けることで実現した、一枚革仕立て

 変わらない職人の技が受け継がれてきた、いたがきのものづくり。施すステッチや、手間を惜しまない細部へのこだわりはどの製品にも同じように注がれています。
 そして、素材となる革は生きていた動物の皮をなめしたもの。生き物が生きた証を大事に活用することはものづくりの基本であると考え、個性のある革のありのままの良さを実感してほしいと手掛けたのが、いたがきの「一枚革仕立て」です。

 安定して質の良い素材が入手できるようになったことで、この贅沢な取り組みが実現しました。

 革の表面は使う程に馴染み育てられていきますが、裏貼りをしない「一枚革仕立て」は表面の下の皮下組織が時間をかけてしっかりとなめされている革であることがとても大事な条件になります。厚い革を大きな面積を使って鞄に仕立てると、革の表面の個性となめしの良い質感が同時に表現でき、とてもダイナミックな仕上がりになります。
 栃木レザー社製のタンニンなめしの革は、堅く丈夫な中に、天然素材ならではの温かいぬくもりを感じることができます。薬品類は極力使わずに、ミモザの樹皮から抽出した樹脂を使用した植物由来のタンニンなめし、人にも環境にも優しく、土にも還るタンニンなめしの革を、なめしたままの厚い一枚革で仕立てることでさらに革の質感の魅力が深まります。

 表情のある革で作り上げた鞄を、使う人が育て、愛着と味が湧き、さらに個性が引き出される、ベルトや小物の他、この一枚革の良さを表現したのが、創業者 板垣英三の意を受け継いでものづくりに励む職人たちの手により生まれた大人のランドセル「いたがきランドセル E565」(製作担当:堀内健一)や、男女問わず愛用される「クラシカルショルダー E568」(製作担当:伊藤博之)です。二つの製品ともに、いたがきの定番商品として幅広い世代の方に人気のアイテムです。

 「もっとタンニンなめしの革の良さを追求したい」。創業当時から追い続けた一枚革の仕立て方も、長く変わらずに同じ素材を使い続けることで叶うことが出来た、道すじの上にある一つの追求にすぎません。

 大切なのは、時代に振り回されず「いいものはいい」を貫くこと。それを未来へ伝え繋げることを忘れずに、いたがきはこれからも歩み続けます。

つなぐ逸品

シンプルなのに他にない 一枚革で贅沢に仕立てた鞄

 未来へ残したい、職人こだわりの一枚革で仕立てた鞄。いたがきランドセルE565とクラシカルショルダーE568は、たくさんの人に愛され、育てられてきました。

 一枚革仕立ての魅力を引き出したおすすめの逸品、いたがきスタッフにも変わらず愛される存在です。

 

 「大人のランドセル」として年齢問わず人気のランドセルリュックは、美しい佇まいの中にどこか懐かしさを感じるデザイン。A4サイズが収まりノートPCも入るのに、背中にフィットする構造により軽く感じられるのがポイント。通勤通学にも普段のお出かけにも、こどもから大人までお使いいただけるので、背中に長く長く愛着を感じることができます。

 クラシカルショルダーは名前の通り、クラシカルな面持ちで持つ人を選ばないシンプルなデザイン。厚みのある一枚革を贅沢に使い、熟練の職人技が散りばめられた鞄です。B5サイズでタブレットの収納も可能なので、ビジネスシーンにもお使いいただけます。

つくるプロが認める鞄を使うプロ。

 十勝の上士幌町で牧場を経営されている森本晃様・静香様ご夫妻。お財布は晃様が黒、静香様が赤、息子さんが黄、娘さんがキャメル、と色違いをご家族お揃いでお持ちなど、他にも多くのいたがき製品をご愛用いただいています。

 今回はご夫妻のお気に入りアイテムをご持参いただき、新千歳空港クラフトスタジオ店でご愛用品のお話を伺いました。

ー いたがきを知ったきっかけ、初めての購入アイテムは?

静香様:雑誌の広告で初めて知りました。空港に店舗があることを知り、家族でクラフト店へ。展示されていた赤の縦型ショルダーが目に飛び込んできて、娘からも「お母さんは柔らかい革が似合うよ」と勧められ初めて購入しました。普段使いから旅行にも、親子でシェアして使っているお気に入りです。

 

ー とても状態の良い縦型ショルダー(M008)ですが美しさの秘訣は?

静香様:お手入れは店頭でしてもらうことが多いです。自分では、使い終わったら型崩れ防止のために詰め物を入れて、吊るして大切に保管しています。

 

ー ご主人愛用のブリーフケース、ご購入のきっかけは?

晃様:フォーマルな場にふさわしく、会合や出張で使えるきちんとした鞄が1つあればと思い購入。丁寧に使い続けて、いずれは息子に渡せたらと思っています。

 

ー 泊まりの遠方出張用に、と購入された大型トートの使い勝手は?

晃様:仕切りのない作りで整理しなくても物がたくさん入ります。ショルダーで手が空くところも気に入っています。

 牧場では150頭ほどの乳牛を飼育されている森本様。生まれた雄牛や役目を終えた乳牛は売りに出され、食肉となったり、いたがき製品のように皮をなめされてバッグになるものもあります。

 牧場から処理に回されて終わり、ではなく私たちの暮らしの中で繋がり巡っていく。「生き物を飼っている人間としては、最後まできれいに使われるのは嬉しいことです」と大変貴重な感想をお寄せいただきました。ありがとうございました。

2023年の干支「うさぎ小銭入れ」製作中

 毎年ご好評いただいている干支をモチーフにした小銭入れ。来年に向けて第4弾となる、うさぎバージョンが完成しました。

 毎年若手職人が開発を担当する同シリーズですが、今年は研修班班長の若手2名がデザインから試作、生産まで一貫して手がけ、フレッシュなアイデアが詰まった一品になりました。雪うさぎのようなころんと可愛らしいフォルムは、カードの入るサイズ感や耐久性などを考えて、ベテラン職人や販売員からもアドバイスをもらいながら何度も試作を重ねて生まれたもの。本体に合わせてデザインした、まんまるしっぽのファスナーつまみもポイントです。直営店・オンラインショップでぜひ詳しくご覧ください。

 コロナ渦でぐぐっと屈んで過ごした数年。2023年は皆様にとって、うさぎのように大きく飛躍する年でありますように。

直営店紹介 ~ようこそ、いらっしゃいませ!~

赤平本店

 赤平本店は、北海道の中心に位置する富良野に程近い自然豊かな赤平市にあります。東京、神奈川、そして北海道へ、鞄づくりの道を歩んだ創業者の板垣英三が、運命に導かれるようにこの地で創業し、今年40周年を迎えました。本社工房を擁するモダンな佇まいの本社屋には職人たちの息吹を感じることができます。また併設のCaféでは、四季折々の美しい田園風景を眺めながら、旭川の名店「昭平堂」のこだわり珈琲を味わえます。雪深い土地柄ではありますが、本店は秋冬もイベントが盛り沢山!11月末は、ものづくり等が楽しめる『お楽しみ会(11/23~27)』、12月は『Xmasフェア』、年始は縁起の良い春財布を販売する『初売り』、また1月末には可愛らしい雪像が登場する『冬まつり』を開催します。

 職人の聖地として、様々な企画をご用意している赤平本店。スタッフ一同、皆様のご来場をお待ち申し上げます。

新千歳空港クラフトスタジオ店

T071 シマエナガタグ

【H55×W52×D3/5g】 ¥1,650(税込)

※新千歳空港クラフトスタジオ店のみでのお取り扱いです

 オープンから20年。変わらずに在り続ける工芸品や新しく加わるクラフト品など、いつも"新しい""楽しい"に出会える新千歳空港クラフトスタジオ。その一角にある鞄いたがきでは、夏にご好評いただいた「シマエナガタグ」を再び数量限定で販売します。北海道で出会えるかわいらしい鳥、シマエナガを刻印した大人気の革タグ。ぜひお早めにお買い求めください。

 そして、昨年冬に誕生した空港店開発商品「トラベルポーチ」の販売から早1年。おかげさまでこちらも大好評でしたが、この度、待望の第2弾として「トラベルタグ」を製作いたしました。タンニンなめし革を存分に味わえる、重厚感のある厚さの贅沢な造り。販売スタッフと職人が細部にまでこだわりましたので、鞄やトランクの目印にとどまらず、旅のお供や贈り物としても満足いただける商品に仕上がりました。

 直営店・オンラインショップにて好評販売中です。皆様のご来店を心よりお待ちしております。

編集後記

 創業40周年特集のラストは、革の良さが直に感じられる、人気の「一枚革仕立て」についてお届けしました。素材力と技術力で、これからもさらに歩み続けるいたがき。次号からの新テーマもどうぞお楽しみに。