今年の創業祭で取り上げたのは「鞍シリーズ」。 騎手がまたがる本物の鞍には耐久性がある厚いタンニンなめしの革が使われています。そしてこの鞍の美しいフォルムを鞄で再現するためには上質なタンニンなめしの革が、それを形にするには職人の高い技術力が必要不可欠です。「鞍シリーズ」は、いたがきが創業以来長い時間をかけて大切に守り継ぎ、使うプロのお客様からも多くの支持をいただいて共に育んできた、まさに創業祭にふさわしいアイテムです。今回は”鞍“を極上の仕上がりのドイツ革で製作できることに大きな誇りを感じていましたが、製品として完成した時の感動はまた格別で、作り手冥利に尽きる瞬間でもありました。

昨年開催されたミラノの素材展では、ドイツSohre社のブースを訪れて久しぶりの再会を喜び合い、ドイツ革への関心の高さや経年変化の素晴らしさについて言葉を交わし、次年度のための革の発注をお願いしました。今年7月、遥々と海を渡ってドイツから到着した革の出来栄えは素晴らしく、製作を前にして武者震いするような感覚を覚えました。

裁断の作業は、一枚一枚表情の異なる革から、大きい部分を中心にサイズや形の異なるパーツを組み合わせ、無駄なく抜き出していく集中力のいる仕事です。目で見ただけでは分からない、なめし具合や繊維の締まり具合なども確かめながら、質の高い革を前に作業を進める時間は、楽しくも誇らしくもあるものです。

一枚ずつ全ての表情が違うドイツ革。
一枚ずつ全ての表情が違うドイツ革。
サイズの異なる革パーツを裁断していきます。
サイズの異なる革パーツを裁断していきます。
一枚の革から無駄なく裁断する作業は集中力が要ります。
一枚の革から無駄なく裁断する作業は集中力が要ります。

出来上がった革のパーツは縫製担当者へと引き継がれ、検品を経て部分ごとに下仕事に入り、パーツの組み立てに縫製と作業が進みます。包丁やカンナを使った作業をしていると、革の上質さが手から直接伝わる感覚もあって、完成が待ち遠しくなります。鞄の前ボディ、後ボディやマチなど、組み立てられた各パーツをまとめていく終盤の工程では、ほぼ出来上がりの様子が分かるようになり、職人の緊張感はより一層高まります。丁重な面取りやコバ仕上げ、まとめ縫いと慎重に作業を進めます。

それぞれの革パーツを組み立てていきます。
それぞれの革パーツを組み立てていきます。
完成形が見えてくると緊張感がより一層高まります。
完成形が見えてくると緊張感がより一層高まります。
組み立てられた革パーツを丁寧に縫い合わせる作業。
組み立てられた革パーツを丁寧に縫い合わせる作業。

創業祭開催まで2週間となりました。限定アイテムはほぼ完成し、お客様の目に触れる時が今からとても楽しみです。タンナーがしっかりとなめした革をいたがきが形にして、お客様の手に渡り、そこからは皆様の腕の見せどころです。お手入れをしながら革を育てて、より魅力的な一品に仕上げていただきたいと思います。ドイツ革のメンテナンスには栃木レザークリームを推奨しています。ケアの方法や頻度など、いたがきの定番品と同様に行ってください。使って触っていると革の状態が自然と分かるようになりますので、必ず定期的なお手入れをお願いいたします。これまで提供してきた革よりも顕著に、目で分かるほど輝きが増して、表情も良い具合に落ち着いてきます。革という素材に対するイメージがより豊かになると共に、皆様のお気に入りの一品に加えていただければ幸いです。まずは店頭でその質感をご覧いただけますように、皆様のお越しを心よりお待ちしています。

 

【2023年創業祭ブログ】

・第一弾「表情の奥深さに魅了された革との出会い」はこちら

2022年1月以前のブログはこちら

※リンク先は2022年1月までのアーカイブです