いたがき通信 Web版 Vol.7(2010年夏号)

いたがきに関する話題をお届けしている
年3回発行の「いたがき通信」
今回の特集は

です。

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職業還暦60年を迎えて 丁稚奉公ものづくり人との出会い 「赤平に根をおろす・・・誘致企業の社員として北海道転勤、そして独立、いたがきの誕」板垣英三 談 その2


創業当時の看板

前回までのあらすじ
昭和10年10月2日に横浜市保土ヶ谷で三人兄弟の末っ子として生まれた私は、疎開で幼少期を過ごし、15歳の時から鞄職人の元で修行することになりました。当時革鞄はとても価値の高いものでした。

その1 を見る

1.いたがきの創業に至るまで

三協鞄製所の設立

3年間の修行を終え19歳の時、兄弟3人(長兄故板垣修一氏と次兄現鞄工作社いたがき会長の板垣航二氏)と両親の5人で鞄の会社を設立しました。当時は従業員も雇えず人手不足の中、家族の力でただ必死に鞄作りに明け暮れた毎日でした。顧みると、人生の中で最も充実した日々だったと言えるかもしれません。

エースでの時代

ようやく順調に仕事が回るようになった東京オリンピックの年に、大阪の卸問屋だったエースが米サムソナイト社と技術提携をしたことを機に、同社創業社長に拝み倒される形で、三協鞄製所を解体し、会社と従業員とともに東京を引き払い小田原に移住し、スーツケース製造の仕事を引き受けることになりました。高度経済成長期の真っ只中に、サムソナイトのスーツケースはその品質が買われ製造はフル回転、工場も手狭になったため、新天地を求めて北海道の赤平に工場を移転することになり、その一員として私も一族共々赤平に移り住むことになりました。次兄が工場長、長兄が経理担当、そして私は商品開発を担当しました。運びやすく底にキャスターをつけたスーツケースが時代のニーズを捕え、会社は破竹の勢いで成長したことは、関わった一人として今でも誇りに思います。

株式会社いたがきの設立


1984年頃 受注品を制作中

革鞄を本格的に作ることを会社に進言しましたが聞き入れてもらえず、自ら独立する道を選ぶことになりました。東京に戻ることも考えましたが、赤平の地で大きくなった子供達のこと、11年の赤平での生活の中で培った人脈、市長をはじめ多くの支援者から「是非とも赤平で!」の声に励まされ、この赤平の地で手づくり鞄の会社を立ち上げたのが1982年でした。船出は想像以上に厳しく、時代遅れの革鞄に目をくれる人は皆無で、生きるために靴製造メーカーの下請けや授産施設の指導員など声がかかればできることは何でも請け負って、その場その場を凌ぐ時期が長く続きました。夫婦共に柱に縄をかけてと思ったことさえ正直あったほどです。地元の人たちに義理で注文をいただいたり、知り合いに商品を取り扱ってもらうことができ、何とか生き延びることができたのです。

2.タンニンなめしを用いた、赤平でのものづくり

ベストセラーとなった“鞍ショルダー”の開発


鞍「TROT」シリーズの試作品を前に
畠山氏、神崎氏と

創業する前の1年半の時間をかけて開発した鞄が、28年経た今でも皆さんに愛されている“鞍ショルダー”です。私と付き合いの長い服飾デザイナーの長井恒高氏がデザインしたこの鞄を、堅いタンニンなめしの革でどう形にするか?完成にこぎつけるまでにはかなりの困難を強いられました。自分でもよく作ったもんだと感心しています。この鞄は、エルメスの方にもお褒めの言葉を頂き、30~40万円位の値をつけられると評価していただくほどの高い完成度でした。

革のこだわりについて

革のなめし方は技術的には主に2通りあり、当時の主流は、化学製品をつかったクロームなめしでしたが、丈夫で長持ちする鞄をつくるのにはタンニンなめしの革がやはり最適です。タンニンなめしとは、樹木から抽出したタンニンを溶かした層の中で時間をかけて「皮」をなめす、古来からの方法で、昔ながらの工程を踏み、手間を惜しまず仕上げられる自然にも優しい素材です。この手間暇をかけてなめされる革だからこそ、使い込むほど風合いが増し、人の汗や温かさに触れ、次第に柔らかくなり、その風合いを増します。ただ扱いが難しく、手間がかかる素材であるため、作り手からは敬遠されてしまうという難点があります。丁稚時代に八木師匠から手解きを受けて、始めて触れた素材がタンニンなめしの革でしたが、独立を考えた当時タンニンなめしは、経済的にも趣向的にも市場からは敬遠されていましたので、使わなければ錆びる鉄同様に、なめしの設備もお払い箱のような状態でした。そんな状態を嘆く、ある工場の責任者から相談を持ちかけられたことが直接のきっかけとなり、タンニンなめしの革を使ってものづくりに取り組むことにしました。

次号では直営店出店や赤平本社新築に至る経緯、そしてこれからのいたがきの進むべき道についてご紹介します。

わが町 赤平

わが町 『赤平』は山に囲まれ、町の中央に空知川が流れる、ほぼ北海道の真ん中に位置する自然に恵まれた町です。

冬期間の積雪量は道内でも多いほうで、11月から3月までは町全体がすっぽりと雪に覆われます。4月になると寒さも和らぎ、桜が開花する5月に春本番を迎えます。夏は気温は30℃になっても、木陰に入ると凌ぎやすい北海道ならではの快適さです。夏は短く、お盆が終わると早くも秋の気配に変わり、9月末から10月にかけて町の山も紅葉に色づき始めます。そんな四季がはっきりした赤平の町の2大イベントと言えば、春の「らんフェスタ」と夏の「火まつり」です。今年で10回目を迎えた「らんフェスタ」は、道内各地から多くの見学者がバスツアーを組んでお越しになる大きなイベントに成長しています。夏は何と言っても7月に行われる「あかびら火まつり」、今年で39回目になるこの夏祭りでは、青年団の赤ふんランナーによるタイマツリレーや勇壮な火太鼓の演奏、クライマックスはズリ山に点火する「火」の文字は壮大で、町の人の心が一つになる瞬間!大事に守っていきたい行事です。

写真:777 段のズリ山から見た赤平市街

弊社社長 板垣英三が会長で、植村真美さんが事務局長となってものづくりの町「赤平」を民間力でパワーアップするために一年の準備期間を経て、昨年平成21年に創設した「あかびら匠塾」。

ものづくりの基盤を支えるのは人、その人を育てる土壌を赤平に作りたいというのが「あかびら匠塾」の目的。

町のものづくり企業の責任者が集まり、企業の存続=赤平の存続をテーマに自分たちに何ができるか?を模索中。 お互いを知り合うための企業訪問を行ったり、同じ志を持って活動している異団体との交流を持ちながら、ものづくりの町「赤平」を民間ベースで健全に育んでいきたい、そんな思いを共有して活動をしています。

ほか参加企業名(順不同)
武藤工業(株)、トルク精密工業(株)、(株)コスモバイオス、
日高屋製菓(有)、まー美(株)、(株)いたがき

直営店界隈のおすすめスポット「京王プラザホテル札幌店」

1エルム高原オートキャンプ場

いたがきのお客様にも「きれい!来やすい!リーズナブル!」とのお言葉をいただく、空知管内で人気のオートキャンプ場です。歩いて行けるところに温泉(沸かし湯)やログハウス「虹の山荘」の宿泊施設があるのも魅力の一つ。インターネット予約が可能。

2エルム高原温泉「ゆったり」

赤平市民の憩いの場として賑わっている、オートキャンプ場に隣接した温泉(沸かし湯)です。この高台から見渡す赤平の景色も素晴らしく、温泉で身体を温めて、いい景色を見て癒し効果は抜群! です。

3日高屋製菓(有)

昭和12年創業と言う老舗のお菓子屋さん。写真の日高社長はお祭りやイベントがあると屋台を出して、盛り上げていらっしゃいます。弊社の社長も大好きな苺のショートケーキは、スポンジと生クリームが程良く絶妙に美味しい!数量限定販売のジャンボシュークリームもお薦め!の一品。

4食事処味の美和

赤平にお越しの際のお昼にお薦め!のお食事処。長年、試行錯誤を繰り返し完成した自慢の豚丼は、特にお薦めで炭火でじっくり焼き上げた道内産のSPF豚のロース肉を自家製ソースで味付け、やわらかな肉に絡み、旨味を引き出し風味豊かに仕上がっています。

Topics

日本のみならず、世界的に有名な彫刻家 流政之氏が赤平に作品を寄贈して下さることになり、その除幕式が6月12日に赤平市エルム高原家族旅行村トリム広場で行われ、先山「SAKIYAMA」と名付けられました。

(写真 高松市流スタジオにて)

作品名 「SAKIYAMA」 2010年作 ミカゲ石 T2125×W1500×D1500mm 約2トン http://www.kokorowake.net/nagare.html
特注班より
~おすすめの逸品《受注制作品》~

社長の指導のもと始動を開始した特注班(質の高いご要望にお応えするために一品制作から限定品5 本~10本の試作に取り組んでいます)で制作を手掛けたクラッシックな高級ボストンバッグ、軽さを考慮して内装には厚手の綿地を使用、口も大きく開き使い勝手も良いです。この夏、赤平本店で展示公開中です。

E1562 ボストンバッグ

受注制作品262,500円(税込)
H290×W460×D260㎜ 1,660g

  • 肩掛けショルダー(すべり止め付)、ハンドルが一つに固定できます。
  • 色:キャメル・ブラック・ダークブラウン
  • H300×W350×D130mm・900g
つくるプロから使うプロの方へ 革のお手入れ

この春から定番品の一部にベルギーでなめしているヨーロッパ原皮(北欧)を使い始めました。

放牧で飼育されている北米の牛と、一頭一頭が番号管理されているヨーロッパの牛

北米原皮は半裁1 枚230DC(2.3m2)、ベルギーマズア社でなめされるヨーロッパ原皮は、半裁で200DC(2m2)以下と欧米人とアジア人のように皮の大きさが違います。皮の質も北米原皮は自然に則した厳しい環境下で飼育されるため、厚く、耐久性があり、ヨーロッパ原皮は、涼しく、乾いている風土のせいで、きめが細かくしまっています。いたがきが使用してきた北米原皮は、仕上げの巧さに定評のある栃木レザーのもので表面がソフトできめ細やかな革です。北米原皮とヨーロッパ原皮の違いもさることながら、Made in Japanと限りなく素材感を生かしたヨーロッパの仕上げをご自分の目で確かめてぜひお試しください。

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