北室かず子さん著の『北の鞄ものがたり〜いたがきの職人魂』から、職人たちの時代やいたがきの製作秘話を抜粋して、毎日少しずつお届けします。

※鞄いたがき公式HP「北の鞄ものがたり」特設ページ

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「鞍ショルダーに宿る5つのITAGAKI」

その4:金具・名脇役たち

持ち主が幸せであるようにと願って添えられた鞍ショルダーの小さな黄金色のあぶみ

(馬に乗るときに足場となる金具)。いたがきは、職人が使う道具からファスナー、鋲類、ハトメなどの金具、布袋にいたるまで細部にこだわりを持つ。

あぶみの素材は鋳物(砂でできた型に流し込んで作る)の無垢の真ちゅうで、表面だけをメッキで加工したものではない。

真ちゅうは、銅と亜鉛からなる合金で、留め具として革馴染みがよく、革を傷めず、金を寄せ付けない。いたがきでは使いやすさを追求した自社オリジナルをオーダーメイドしている。

真ちゅうは、時間と共に色合いがやわらかく変化し、タンニンなめしの革のエイジングとの相乗効果で独自のヴィンテージ感を生み出す伝統的素材。

小さな金具にも、歴史と新年が秘められている。

―続く―