丁稚奉公というと懐かしい響きがする言葉になってしまい、どの業種でも丁稚奉公を経験した現役は今はもうわずかで、経験者の話が聞ける機会は少ないのですが、物作りに関わっていると15歳から職を学ぶということは心身ともに理想的な年齢ではないかと思います。いたがきの中では社長との雑談や朝礼の中で、当時の話を聞く機会があります。初めの3ヶ月は親方とは全く口を聞いてもらえなかったこと、鞄作りというよりはお掃除、洗濯、仕事場の準備等、現場の秩序や順序をまず体に叩き込まれる。待っていても手取り足取り教えてくれるわけではない、全てがわからず辛いことだらけ、でもそうして仕事をいただけた時にはものすごく嬉しくて、必死でやったそうです。職は与えてもらうものではなく自らが克ち得るということを15歳の若さで体得する。大人になるスタート地点に立った年齢だからこそできる、また独り立ちする準備として克服しなければならない、話を聞いていると丁稚奉公という経験が神聖な儀式のように思えてきます。 …次回に続く