なぜ私の父が鞄屋になったか?というと聞いて驚く不思議な巡り合わせがありました。三人兄弟の末っ子に生まれた父は甘えん坊で、お裁縫の腕が抜群だった母親と共にした時間は長く、お針の仕事や編み物をする姿をよく目にしていたせいか、気がつくと一緒に編み物を見よう見まねでする男の子に・・・ 仕事を始める年齢になったとき母親から「お前は手先が器用だから手に職を身につけるといい、東京にいる靴屋のおじさんを訪ねて行きなさい」とアドバイスされたそうです。言われたとおりに訪ねて行くと靴屋のおじさんから「おじと甥の間では甘えが出る、知り合いの鞄屋を紹介するからそこで辛抱しなさい」といっておじさんが、今も師と仰ぐ八木廉太郎氏を紹介して下さったそうです。それが社長の鞄屋としての人生の第一歩になったわけで、こんな話を聞くと、人の一生というのは妙な出会いが織りなすチャンスに導かれて成り立っていくものだとつくづく思います。