北室かず子さん著の『北の鞄ものがたり〜いたがきの職人魂』から、職人たちの時代やいたがきの製作秘話を抜粋して、毎日少しずつお届けします。

※鞄いたがき公式HP「北の鞄ものがたり」特設ページ

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「鞍ショルダーに宿る5つのITAGAKI」

その3:手しごと

かつて、炭鉱というとてつもなく巨大な産業で栄えた赤平市。その風土に根差すいたがきにも、“個人の能力をともに生かす”というチームワークの空気が満ちている。

革は、機械で作る素材とは異なり、一枚一枚状態が違う。そのため各工程で一人一人が積み重ねていく作業が、最後の仕上げに大きく影響する。

例えば、革の裏側を手で触れて、銀面(表面)かわら見えない傷や色むらを見つけ、その場所を避けて裁断する、縫製しやすいように部分的に革を漉く、鞄の輪郭にとって重要なコバは、わずかなざらつきも削り落とし、専用の仕上げ材を丁寧に塗り、磨き、見た目に美しく指通りよく仕上げる。ほかにも糊付け、縫製、検品、販売、広報、修理など、誰かの作業が一つ欠けても鞍ショルダーにはならない。「人がいるからできる」。鞍ショルダーには確かに人が生きている。

―続く―

「鞍ショルダーに宿る5つのITAGAKI」