鞄いたがきは、お陰様で10月2日に創業34周年を迎えます。これも一重に皆様からのご愛顧の賜物と、社員一同厚く御礼申し上げます。

この34年を振り返り、いたがき創業時より多くのファンを持つ代表作「鞍シリーズ」の魅力を、誕生秘話と共にご紹介いたします。

タンニンなめし革との出会い

英三会長が15歳で修業の道に入った時代、鞄の素材は“タンニンなめし革”が主流でした。丈夫で使い込むほどに艶が増していく、ただ、一筋縄ではいかないタンニンなめし革を使って、美しい鞄を次々と生み出す師匠との出会いから、会長の職人人生が始まりました。

後年、北海道の地でいたがきを立ち上げる際にも「タンニンなめし革の素晴らしさを知ってもらいたい」という想いは変わりませんでした。タンニン革は、自転車のサドルや靴底、ミシンのファンベルトなど、その丈夫さゆえ、道具として活躍していたものの、革のなめしにも、加工にもかなりの手間がかかる為、作り手にはあまり好まれない素材でした。「よく、そんな革を相手にしたね」と仲間からあきれられる程でしたが、実直な英三会長はそんなタンニンなめしの革と向かい合い、コツコツと鞄を作り続けました。

いたがき第一号作品「鞍」の誕生

「何か会社のシンボルになる鞄はないものか」。北海道で創業することになり、その一番の課題に取り組んでいた時、1つのデザイン画が持ち込まれます。それは美しい“鞍”の姿をした鞄でした。そこから経験豊富なデザイナーとタンニンなめしの革と、ものづくりへの情熱に満ち溢れていた英三会長の奮闘が始まりました。完成までの道のりは長く、ただでさえ曲線が多く複雑な形を、難しい素材で作り上げるのは大変な困難で、試行錯誤を繰り返し、ようやく第一号が完成する頃には1年半が経過していました。こうして出来上がった、いたがき第一号作“鞍ショルダー”は「今も昔も、こんな鞄はあなたにしか作れない」と職人仲間からも称賛される、いたがきの代表作となったのです。

究極の職人技を込めた「鞍」

いたがきの“鞍”は「無から生み出す」発想力と、タンニン革を知り尽くした長い経験、そして熟練の職人技の集大成とも言える鞄です。内装など見えない部分にも考え抜かれた工夫が施され、その縁の下のパーツのおかげで、無駄になる革はほとんどなく、見た目にも無理のない、内面からにじみ出るような美しい表情に仕上がるのです。

例えばE919鞍ショルダー大は、57個もの革パーツから組み立てられています。重要なのは鞄の土台となる後ろボディで、一番良い部分の革を使います。縫う人だけでなく、裁断する人の技量も問われる製品です。独特の立体的なフォルムは、厚い革が折れないように、ゆっくりと時間をかけて、慎重に曲げながら形作られていきます。

そして究極は、ショルダーを取り付ける部分の“手縫いの根革”です。これは鞄を完成させてから、最後に仕上げるパーツで、まず手縫いが出来る人でないと思いつかない、手縫いができてもやりたくないほど手間のかかる作業です。それでも「このパーツがないと、この鞍のデザインは完成しない」と言う、職人の高い志から生まれた独特の手法なのです。

英三会長から受け継がれる「鞍」

「硬い、重い」と言われ、表立って注目されなかったタンニン革を「丈夫で、年を経るごとに美しくなる」素晴らしい革であると、世の中に伝えるために生まれた“鞍”シリーズ。

英三会長の想いは、長い年月を経て、今では若い職人たちに受け継がれています。

お客様から「いつか欲しい憧れの鞄です」と言われるように、若い作り手たちにとっても「いつか作れるようになりたい目標の鞄」なのです。すでに完成している鞍を縫うことは出来ても、一からその形を生み出すためには、20年以上の経験と修行が必要です。

ものづくりは一朝一夕に成らず。日々の地道な作業を繰り返して、ほんの一握りだけが花開く世界でもあります。会長からベテラン職人へ、そして職人の卵たちへ、“鞍”を目指す事で日本の伝統である“職人魂”は受け継がれていきます。

完成から34年目。新しい「鞍シリーズ」へ

今年の創業祭では、今までの鞍シリーズに新しくE934「鞍ショルダー小型」(キャメル1色・受注生産)B915-13「鞍ショルダー小」(ネイビー)、B113-13「馬蹄ドル入れ」(ネイビー)が登場します。お客様からのご要望が多かったサイズや、人気の高いネイビー色を取り入れた限定商品です。

鞄作りの全てが詰まっているいたがきの”鞍“シリーズをぜひ、店頭でご覧下さい。

皆様のご来店を社員一同、心よりお待ちしております。