いたがき通信 Web版 Vol.23(2015年秋号)

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たくさんの専門家の技が詰まっているいたがきの革製品。今年は3回に渡りその素材についてご紹介してまいります。 ルガトー革の郷と年2 回開かれる革の見本市。今回は、いたがきの中でも人気の高いルガトーシリーズの革をなめしている、ベルギーの老舗タンナー「マズアー社」と、いたがきのヨーロッパでの革調達の裏話をご紹介します。

世界の老舗タンナー Masure

タンニンなめしの革

いたがき製品の革には、春号でもご紹介した栃木県の「栃木レザー」でなめされた革と、ベルギーの「マズアー社」でなめされた革の2種類があります。マズアー社製の革は、ベルギー革、ルガトー革、ブラスコットの3種類を使用しています。どの革も、職人の皆さんが技術と時間と手間をかけて仕上げた、堅牢で型くずれしにくく、使えば使うほど味が出るタンニンなめしの革です。

ヨーロッパの革は、 牛をあまり大きく育てずに、柵の中で1頭1頭を管理して飼育しているためキズが少なく均一で、しなやかできめが細かいのが特徴です。マズアー社は、1873 年創業。世界の名だたるトップブランドから、オリジナル革の生産を任されている、タンニンなめし界の権威です。140年以上の歴史に裏付けされた専門技術と、常に新しいトレンドを受け入れる姿勢で、ヨーロッパだけではなく北米や東アジアへ輸出しグローバルな発展を続けています。

4年前に海外研修として、いたがきから2名のスタッフが訪問し見学させていただいたことがあります。広大な工場には51のタンニン槽があり、これは会社の宝だと仰っていました。

工場内

工場内はどこを歩いてもクリーンで、なめし工場特有の臭いも気にならないほど、しっかりと設備が整っています。若い職人が黙々と作業に打ち込み、一枚一枚の革を丁寧に扱っている姿が印象的でした。

工場内

いたがきがマズアー社と出会ったのは、1999年のこと。弊社社長の板垣江美はドイツ在住で、いたがき製品のパーツづくりや、新製品の試作をするための小さな工房を構えていました。ヨーロッパ産の革もいたがき製品に加えたいと考え探していたところ、ある日工房を訪ねてきた一人の老人との出会いから、人から人への不思議な縁に導かれてマズアー社へたどり着き、そこでルガトー革に出会いました。ルガトー革を一目見た瞬間、板垣江美は「この革で鞄を作りたい」という思いに駆り立てられたそうです。

世界最大級の見本市 LINEAPELLE

リニアペッレ

革の本場ヨーロッパでは見本市が数々開催されますが、中でもイタリアで春と秋の年に2回開かれるリニアペッレと言う素材展は、世界中のタンナー、革関連の会社が集結する世界最大規模の見本市です。

弊社社長がヨーロッパ在住という利点を活かし、ヨーロッパの質のよい革を入手す ることができていますが、このリニアペッレにも、革のトレンドや世界の皮革業界の動向を掴むため、毎年訪れています。

今年の春は2月25日から3日間開催され、弊社社長と一緒に、革の管理を担当しているベテランスタッフと、このいたがき通信の編集に携わっている若手スタッフが同行しました。今回は、世界41 ヵ国から1,086社がそれぞれ趣向を凝らしたブースを出展しており、来場者は2万人を超えたそうです。

革だけではなく布地や金具、同時開催で機械展も開催されており、鞄作りに関連するほぼ全てが揃っていると言っても過言ではありません。いたがき製品で内装に使用している再生革「WINTAN」もここで見つけた素材です。また、弊社の裁断部門で使用している、大型の裁断機や、たくさんの抜き型を整理整頓できる収納棚、縫製部門で使用している身体に害のない接着剤など、この素材展で収集できるヨーロッパならではのイノベイティブな情報は、赤平でものづくりに従事する作り手の作業環境の改善や作業効率の向上にも大いに役立っています。

リニアペッレリニアペッレ

いたがきではこれからも、お客様によりよい製品をお届けするため、国内外問わず素材の開拓に取り組んでまいります。

いたがきスタッフレコメンド いたがきおすすめの逸品を、製造スタッフと販売スタッフそれぞれの視点からご紹介します。

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販売部(入社2年目) 岩淵 登夢

販売スタッフより:

いたがきの代表作・鞍シリーズのあぶみ金具をあしらった小物は、老若男女問わず人気の品でプレゼントとしても喜ばれています。馬蹄とあぶみのエレガントなデザインの「馬蹄ドル入れ」も人気商品の1つです。馬蹄はヨーロッパでは魔除けの縁起物として知られています。

また、「頭の良い馬は、走行中の車にはぶつからない」ということから、馬のモチーフは交通安全のお守りとしても重宝されています。「鞍キーケース」は一見大きめに見えますが、実は裏側にカード入れがついていて駐車券や免許証などを入れるのにぴったりです。京王プラザホテル札幌店では、開店当初から店舗の鍵を付けて使っており、毎日活躍してくれています。

販売部 小坂 真美子(入社5年目)

製造部責任者(入社12年目) 伊藤 博之

製造スタッフより:

鞍シリーズは、そのデザインの美しさを損なわぬよう、パーツのバランスには特に気をつけています。「馬蹄ドル入れ」も複雑なデザインで、バランスが崩れると構造自体にも歪みが出てしまいます。かぶせだけでなく、マチ部分も最後に型出しをするなど、細部まで手をかけています。

型崩れしないのは堅牢なタンニンなめし革だからこそ。特に毎日使う小物には革も上質で強い部位を選んでいます。中でも「あぶみキーホルダー」は厚い革を貼り合わせた頑丈な作りで、ミシンの針が曲がってしまう程ですが、それだけ丈夫で耐久性のある逸品です。

これからも手間を惜しまぬものづくりを続けて参りますので、ぜひ末永くお使いいただければと思います。

製造部 寺田 あかね(入社13年目)

つくるプロから使うプロの方へ 再生革《WINTAN》について

素材探求は作り手にとって大きな課題ですが、内装地は見えない所だけに、見栄えだけでなく耐久性や作業性などを考慮して選定しています。

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スイスメイドの再生革《WINTAN》をいたがきで使い始めて10 年以上の時が経ちます。WINTANとは、靴作りの端材の革を粉砕して再びシート状に固めた素材です。昔は重くて柔軟性がなく、内装地としての使用は困難でしたが、現在では品質も安定していて、堅牢なタンニンなめし革製品の内装地としては軽さも強度も程良く、内助の功を発揮してくれています。

裂けに弱いところが欠点なので、内装のポケットなどは裂けにくいように加工して弱さを補っています。小銭入れ等では、修理で戻ってくるものを見ると、ポケットに入れて汗で濡れた形跡があると内装地も劣化していることが分かっています。WINTAN の貼り替えを行い元の状態に修復することも可能ですので、お使いの品で気になる点がありましたら、ぜひご相談ください。

再生革《WINTAN》について

いたがきの製品を長くお使いいただくために

東京都 植野 弘子様のお鞄
修理依頼商品:EW919(旧品番E919)鞍ショルダー 大【現価格 ¥97,200(税込)】

修理前

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修理前

修理前25年以上前に通販雑誌で購入され、以来お出かけ用としてご使用されていたそう。1、2年前から内装地がポロポロと剥がれるようになり、京王プラザホテル新宿店にて修理をご依頼されました。

修理内容
内装を革に交換・メンテナンス
計¥32,400(税込)

ショルダー取付部交換の場合は¥7,020(税込)
アブミ部分革交換の場合は¥7,020(税込)
メンテナンスのみの場合は¥4,320(税込)

修理期間
通常、約2~4ヶ月 ※ 修理の内容によってお見積金額・納期が変わります。ベテランのスタッフがお客さま一人ひとりに合わせてご提案させていただいております。

修理工程

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1. 解体
1.解体

丁寧に糸を解きながら解体します。

2. 内装を貼り替える
2.内装を貼り替える

ひび割れた内装地を剥がし、革に張り替えました。ポケットも同様に革で作り直します。

3. ミシン縫い
3.ミシン縫い

解体前の針穴に沿って、丁寧に縫い合わせていきます。

4. コバ仕上げ
4.コバ仕上げ

革塗装が剥がれていた革の縁(コバ)を磨き直し、再度表面材を塗っていきます。

5. 手縫い
5.手縫い

ミシンでは縫えない肝心なハンドル部分を、最後に手縫いで仕上げます。

6. 完成
貼り替えた内装はもちろん、外側も擦れた部分に色を入れ直し、美しく仕上がりました。
6.完成6.完成
植野様より
以前他のショルダーバッグを修理に出したところ仕上がりが良かったので、また修理を依頼することにしました。今回も思った通りの仕上がりです。仕事等で使うためではなく、線の美しさとモノとしての面白さに惹かれて購入したものなので、これからもこの鞄に似合う場所を見つけて使っていければと思います。
修理担当より
25年以上使用されていると思えない程、とても綺麗に大事にお使いいただいているので嬉しく思いました。これくらい長くお使いになるとアブミ革(金具の付いているところ)が切れて交換するお客様が多いのですが、その必要が無かったことに驚きました。これからも末永くご愛用ください。

直営店情報 〜ようこそいらっしゃいませ!〜

京都御池店

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秋も深まり、京都の街も一段と美しい季節になりました。これから冬にかけて文化財や寺院、庭園などの特別拝観が始まります。特に今年は「琳派誕生400年記念」をテーマに、それにまつわる芸術品や国宝の展覧会も数多く行われています。長い歴史に秘められた京の美を訪ねて、ぜひ京都へお越しください。

店内から見る秋の御池通店内から見る秋の御池通

京都限定品 金襴× 鞍ショルダー京都限定品 金襴× 鞍ショルダー

いたがき京都御池店では、毎月「ものづくり教室」を開催しております。タンニンなめし革を使ってものづくりの楽しさを体験していただける教室です。スタッフが丁寧にお教えしますので、お一人様からでもお気軽にご参加ください。詳しくはいたがき京都御池店までお問い合わせください。

毎月開催されるものづくり教室毎月開催されるものづくり教室

京都御池店

京都御池店
〒604-0825
京都市中京区御池通堺町西入御所八幡町233 Mezzo 御池1F・2F
TEL・FAX 075-222-5656
営業時間:11:00〜19:00(火曜定休日)

麻布十番店

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大使館の多い麻布十番周辺は、六本木も散策圏内という、国際的で都会的な地域でありながら、創業100年を越す老舗も多く、下町の魅力も併せ持つ街です。間口の小さな飲食店やこだわりの洋品店などが軒を連ね、何度訪れても新たな発見に溢れています。

秋から冬にかけてはイベントも多く、いたがき麻布十番店近くのパティオ十番や六本木ヒルズ、東京ミッドタウンなどで開催される クリスマスイルミネーションは特におすすめです。夜遅くまで点灯しているので、当店にお越しの際は、ぜひ界隈の下町歩きからアーバンな六本木への散策をお楽しみください。

当店近くにあるパティオ十番のイルミネーション当店近くにあるパティオ十番
イルミネーション

六本木ヒルズ前のけやき坂六本木ヒルズ前のけやき坂

麻布十番店

麻布十番店
〒106-0045
東京都港区麻布十番2-21-14
TEL・FAX 03-5439-9895
11:00 ~ 19:00(火曜定休日)

編集後記

今年は3回に渡り「素材へのこだわり」をご紹介しました。いたがきの源流である革、鞄づくりに不可欠な金具や内装地、また道具や梱包材など、多くの方々との関わりによっていたがき製品が作られていることを改めて実感した、感謝の一年でした。

来年度のかわら版も、どうぞお楽しみに。