いたがきに関する話題をお届けしている
年3回発行の「いたがき通信」
今回の特集は
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赤平本店ショールームの上にある開発室では、今日も試行錯誤を繰り返し、お客様により良い製品をお届けするため新商品の開発、定番商品の改良に取り組んでいます。
今回は毎年恒例のクリスマスフェアに合わせて取り組んでいる人気のRugatoシリーズの商品開発の様子についてご紹介します。
新作への取り組みは、市場のニーズに合わせて企画開発することが多いですが、Rugatoシリーズは素材が主役で、そのルガトー革に魅せられたお客様が大変多いことから、素材を生かした作り手発信の企画開発に取り組んでいます。ルガトーの革を手掛け始めた頃は、手慣らしのために小物の制作を優先していましたが、ブラスコットと呼ばれる背中からお尻の部分《Buttバット》の最上級の革をRugato調に仕上げて供給していただけるようになり、ここ数年は鞄の開発に力を入れています。革鞄はパーツの面積も大きく、使用しての消耗度も高いので、見た目よりも革の繊維の中身が勝負で、安定感のある高い品質の革の使用が不可欠です。
革の中でもブラスコットは、靴底やベルトなどに使われるほど、見かけよりもその丈夫さ耐久性が特徴で、革の繊維が密集していて肌理(きめ)が細かく、革の質が最も安定しているため大きな鞄の制作には最適な最上級の革です。いたがきでは、小物には首から肩にかけての筋模様「トラ」が美しい《Shoulderショルダー》の革、鞄には《Buttバット》の革というように、それぞれの素材の特徴を熟知した職人だからこそできる、革本来の持ち味を活かすものづくりをしています。
BW564 スリムショルダー
20年来、人気商品として不動の存在だったトートバッグを、さらに使いやすく進化させたスリムトートバッグをRugatoバージョンで制作しました。これまでのトートバッグは5種類の大きさや形がありましたが、この新しいスリムトートはその全てを集約させています。
BW 719スリムトートバッグ
A4は入らないと役に立たないし、かといって幅が広すぎると重たくなるし…今までお客様からいただいてきた声を全て取り入れ、大でもなく中でもなく持ちやすい大きさを目指しました。たくさん入れたい人には少々不向きかもしれませんが、本当に必要なものを計算してスマートにものを入れられる、お出掛け上手な鞄です。
先にご紹介したブラスコット革のお陰で、この大きなボストンバッグは誕生しました。美しいボルドーの革で仕上げた、クラシカルな大型鞄は、他にない上品な存在感。歴代の試作品を参考にして作り上げた旅行鞄は、とてもクラシックな雰囲気に仕上がりました。近年あまり見られなくなった昔ながらの作りで、内装にはお出掛け道具を小分けできるポケットをたくさんつけました。外観のふんわりとしたシルエットの口の部分は、横のホックを外してファスナーを開けると、スッと上に立ち上り、口が大きく広がります。また、頑丈なショルダーも付いて実用性もありますので、ビジネスやプライベートのご旅行にお持ちいただきたい一品です。
さて、今年は商品開発にスポットを当て、3回に渡ってご紹介してまいりましたが、いかがでしたでしょうか?皆様のご希望に応える商品は、素材の特性を生かして、手間を惜しまず形にしていくことが、いたがきの商品開発の原点です。より進化した製品をお届けできるよう、切磋琢磨し、日々のものづくりに、商品開発に真面目に取り組んで参ります。
B720 ボストンバッグ
いたがきの素材は《タンニンなめしの革》で厚く丈夫な革を使用しています。そのため縫う作業も縫うためのミシンも特別で、熟練した技術が不可欠です。
遠い昔、創業者板垣英三(現78歳)が丁稚をしていた当時は、ミシンを持っている職人は数少なく、手縫いが当たり前に皆ができた時代でしたが、高度経済成長のスタートと共にミシンも出回り、手縫いからミシンへシフトされていきました。
手縫いとミシンは、馬車と車ほどの違いがあり、どちらが良いかというより、ミシンでは縫えないところでも手縫いはできるので、両方の技術を持ち合わせることでものづくりの可能性は広がります。厚いタンニンなめしの革を縫うことは相応の技術を持っていても慎重な作業になります。正確にきれいに締りの良い縫い《ステッチ》がより製品の耐久性と品格を高めますので、ミシンを使いこなせるようになることは、ものづくりのファーストステップとして大事な習得過程です。
いたがき京都店からほど近い「寺町商店街」の一角に構える「スマート珈琲」で、三代目店主を務める元木様。京都でお店をなさる立場から感じる、「いたがきのものづくりの心」について、スタッフ寺田が伺いました。
寺田:いたがきとの出会いは?
元木様:通勤路が三条通で、移転前のお店の工事中から「何が出来るのかな?」と興味を持っていました。もともと革製品など使ううちに変化していく自然なものが好きで、「すごく高いんじゃないかな」と緊張しながらお店を訪れましたが、きちんと製品に見合った値段でつくりも丁寧で、自分の好みにぴったりでした。一番初めに E160Sドル入付札入を購入して以来、自分だけでなく母や父にもプレゼントしたりと家族で使わせてもらっています。
寺田:ありがとうございます。元々革製品がお好きだったんですね。
元木様:はい、いたがき以外にもブランド物も含めて色々な革製品を使いましたが、タンニンなめしの革は初めてで、使えば使うほど風合いが変化していく様子がまるで生き物のようで、とても気に入っています。毎日まめに手入れをする方ではないのですが、愛情を持って大切に使っているのでとても綺麗になってきました。
寺田:ぜひまたお手入れにいらしてくださいね。京都店の印象はどうですか?
元木様:京都という街は独特な文化があり、よく「一見さんお断り」のように言われますが、実際は一度認めてもらえれば懐がとても深いところです。自分の信念やこだわりをしっかりと持った人も多いので、大切なのは「ぶれない・変えない・変わらない」事。時代の流れに歩み寄る柔軟性も必要ですが、そこに一本筋は通っていないとダメになる。こだわりの無いもの、心のこもらない物はすぐに飽きられてしまいますが、いたがきの製品にはその心があると感じて大好きになりました。
寺田:京都で老舗を続けられる、元木様ならではのお言葉ですね。
元木様: 自分の店でもそうですが、いくら美味しい珈琲を淹れても運ぶ人が無愛想だと全てが台無しになります。作る人も運ぶ人もお客様に最高の珈琲を飲んでもらいたいと思わないとだめです。いたがきさんもただ物を売るのではなく、心を込めて作った製品を是非お客様に使ってもらいたいという想いを感じます。これからも良いものを作り続けて、お客さんに届けて欲しいと思います。
E168コインケース付札バサミ、E160Sドル入れ付札入れ、EW175プレイング 束入れなど、色違いの物をTPOに合わせて使い分けられているそうです。
京都店 堺町御池通北側へ
3年前に関西で初めての直営店として、京都の三条通にオープンしたいたがき京都三条店が、今年の夏にケヤキ並木が美しい堺町御池に移転し、「いたがき京都店」として新たなスタートを切りました。
新店舗の設計は、京都に拠点を置いて日本建築を代表する数寄屋造りの住居や店舗の設計をされている二村和幸氏(二村建築研究所 代表)にお願いして手掛けていただきました。1階は京都伝統の技が伺える和風の造りに、2階は北海道の大自然を感じさせる大らかで優しい空間になりました。 4.7坪のこじんまりとした1階のスペースは、和のおもてなしを大切にする京都の心を学び伝えていく担い手として、ささやかな《ワークサロン》として活用できるように準備いたしました。こちらではお客様と一緒に革小物を作る「ものづくり教室」や、点てたお茶を気軽に楽しんでいただく、立礼のお茶会などの催し物を予定しています。
いたがき京都店は、地下鉄烏丸線・東西線「烏丸御池駅」の1番出口から東へ歩いて約3分、お車でお越しの場合は御池地下駐車場が一番近くにございます。ぜひ一度、新しくなったお店へお出かけください。スタッフ一同、心よりお待ちしております。
私の愛用品はE273シンプル名刺入れ3,465円(税込)と、EW175プレイング束入れ21,000円(税込)です。名刺が25枚程度まで入る薄い名刺入れはスーツのポケットでも嵩張りません。長財布はカード・お札・小銭が取り出しやすくてファスナーも滑らかで2つともに愛着があります。それぞれ約12年、8年と使い続けており、柔らかく手に馴染んで色も自分好みの深みが出てきました。どちらも譲り受けたものですが、とても丈夫でこれからも大切に使い続けて行きたいと思います。
寺田 尚由
私の愛用品は、M524タウンポーチ29,400円(税込)です。小振りな財布、ポーチやハンカチ、手帳と携帯電話が入り、コンパクトにまとめておきたい自分にはぴったりの鞄です。本来はハンドルが付いた製品なのですが、私は別売りのショルダーを合わせてポシェットのように使っており、とてもシンプルなデザインなのでどんな服装にも合わせられます。使い始めて1年、もっと良い風合いになるのが楽しみです。
寺川 明希
今年のいたがき通信では、3回にわたり新商品の開発についてご紹介してまいりました。「使うプロ」であるお客様の声を元に、これからも開発部では新商品の開発や改良に努めてまいりますので、今後の新作情報にもぜひご期待下さいませ。来年のかわら版も、どうぞお楽しみに!